Nihon Onsei Hanyaku LLC

録音のすすめ・質のいい録音を残すには

1.「言った・言わない」にならないために
 近年、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、労働問題、離婚問題、虐待等の証拠音声を起こすご依頼が増えております。あとで「言った・言わない」にならないためにも、また、後々の裁判等のことを考えて証拠を残しておくという意味でも、スマートフォンのアプリでもいいので、何かあったときにいつでも録音を残しておくことができるように準備をしておくことをおすすめいたします。 
 また、録音をすること自体に罪悪感を覚える方も少なくないかもしれません。そのような考えはひとまず捨て、少しでも「これはおかしいぞ」と思ったときから証拠を残すことに努めましょう。結果的にトラブルにならなければ、その証拠を使わなければいいだけの話です。紛争の成熟度が増せば増すほど、相手が身構えれば身構えるほど、こちらに有利な証拠を残すことは難しくなってきます。初動が大事だということを肝に銘じましょう。
2.ICレコーダー
 ICレコーダーを購入する際は、パソコンと接続できるもの、またはSD(microSD)カードに記録ができるものを選びましょう。私たちのような反訳業者や弁護士等へのデータの受け渡しが容易になるからです。その機器自身でしか再生できないようなものを購入してしまうと、あとでデータとして受け渡すことが大変困難になります。その点だけ注意をしましょう。
 秘密録音をする場合が多いと思いますので、高音質だからといってあまりに大きいものを選ぶこともやめましょう。録音環境さえよければ、数千円のもので十分な録音品質を得ることができます。
3.スマートフォンでの録音
 iPhoneに標準で入っている「レコーダー」「ボイスメモ」や、Androidに標準で入っているものを使用してもいいですし、使いやすいアプリをストアで無償ダウンロードする、有料アプリを購入することを検討してもいいでしょう。一つ注意しておきたいのは、iPhone標準の「レコーダー」で録音をしている際に着信があった場合、録音が停止してしまうという点です。これを防ぐには、iPhoneを機内モードにしておくといいでしょう。
 相手との通話の録音に関しては、基本的にはiPhoneではできないと思っていいでしょう。アメリカの法律に合わせて、そもそも通話の録音ができない仕様になっているためです。iPhoneで相手との通話を録音する場合は、アプリではなく、下に示したようなテレフォンピックアップを使用しましょう(ICレコーダーも必要になります)。一方、Androidには通話を録音するアプリが多数用意されています。おすすめは「Call Recorder」です。このアプリは、インストールさえしておけば、すべての通話を自動で録音してくれます。ただし、フリー版に関しては、容量などの制限があることに注意をしましょう(古いものから削除されていきます)。

・テレフォンピックアップ
4.どこに置くべきか、どこに入れておくべきか。
 そもそも、録音をしてもそれを聞き取ることができなければ、有効な証拠とはなりづらいですし、正確に文字に起こすことも困難になります。できる限りノイズのない録音を心掛けましょう。秘密録音において最も多いノイズの原因は擦過音、マイク部分と服等がこすれて発生するものです。こちらについては、下で紹介する方法である程度は防ぐことができます。次に多いノイズの原因は空調や機械、風の音です。ファミリーレストランなどにおいては、周囲のお客さんの声もノイズとなる場合があります。これらのノイズについては防ぎようがありませんので、できるだけ静かな環境をあらかじめ選んでおくような対策しか採ることができません。
 また、録音時に本体が光るようなもので、設定でライトをオフにできるような場合、ライトオフの設定をあらかじめしておきましょう。それができない場合、光る部分をガムテープ、厚紙等で覆う等の処理をし、録音に臨みましょう。
 PanasonicとOLYMPUSからはペン型のICレコーダーも発売されています。これらのものについては、普通のペンとなかなか見分けがつきませんので、堂々と胸ポケットにしまって録音することも可能です。ペン型のICレコーダーでない場合、スマートフォンでの録音の場合、難しいかもしれませんが、服のポケットの中に入れての録音は極力避けるようにしましょう。ご自身が動くたびに上記のような擦過音のノイズが入ることになります。口の開いたバッグの上に置いておく(マイク部分だけ露出させて、何かでカバーをする等は必要になるかと思います)、ほかの荷物に紛れさせて手で持っておく等、できる限りノイズが入らないように注意をすることが必要です。
 ポケットの中に入れて録音をせざるを得ないような場合、極力体を動かさない、マイク部分と服とのこすれをなくすような工夫が必要となります。
5.ノイズをなくすために
 パワハラやモラハラ、セクハラがいつ、どこで行われるかは録音をする側では基本的には分かりませんので避けようがないのですが(もちろん、日頃どこで行われるかということを経験から予測することはできますが)、できる限り屋外での録音は避けましょう。風が強い日などの録音は、風の音が大きなノイズとなり、ほとんど聞きとることができないということも多々あります。
 また、若い方が多く訪れる居酒屋等での録音も極力避けましょう。周囲の声がノイズとなり、正確に聞きとることができない場合が多いです。
 スマートフォンでの録音、ICレコーダーでの録音、どちらの場合においても、マイクがどこに配置されているかを把握しておくことはとても大事です。例えばスマートフォンにおいてマイクが機器の下の部分に配置されているような場合、胸ポケットに上下逆に入れておくことでも、ノイズをかなり低減することができます。
6.その他、録音をすることのメリット
 まず、録音をすることによって、こちら側も感情的にならずに冷静に相手と話すことができます。こちら側から不用意な発言をすることもなくなるでしょうし、心の中で「証拠を取るんだ」と思っていれば、あなたに危害を与える相手に対してのストレスも少しは軽減するのではないでしょうか。あとになってみれば、相手の発言がそのままあなたにとっての武器となります。後々相手と戦っていくための武器を用意しているのだと思うようにしましょう。逆に言うと、武器がなければ相手と戦うことはできません。
 また、武器は多ければ多いほど有利であるということは言うまでもありません。例えばパワハラによってうつ病を発症したような場合において労災認定の判断がされる場合、その行為(パワハラ等)が執拗であったかなかったかということが大変重要な判断基準となります。できるだけ多く録音をすることを心掛けましょう。そのときは無駄だと思っていたとしても、あとになって、無駄と思っていた録音が役に立つ場合もあります。また、「あのとき、ちゃんと録音していれば」と後悔することもあるでしょう。悲しい現実ではありますが、証拠がないものに関しては「なかったもの」と扱われてしまうことが多いのです。
7.録音の練習をする
 Andoroidでの通話録音の話になりますが、アプリによってはお使いの機器で正常に動作しない場合があります。アプリをインストールした場合、それが正常に使えるかどうかをまずテストしましょう。時報(117)にかけて一人で話してみてもいいですし、家族に協力してもらってもいいでしょう。「録音していたつもりだったのに……」という事態は絶対に避けたいものです。
 通話録音以外の場合も、何かあった際にすぐに録音ができるように機器の操作の練習をしておきましょう。ぶっつけ本番の録音は失敗するリスクが伴います。例えば上司から日常的にパワハラを受けているような場合、すぐに録音機器のスイッチを入れることができるよう、家などで練習をしておくことをおすすめいたします。もちろん、相手に気付かれずにスイッチを入れることが重要となりますので、スイッチを入れるタイミングは入念に注意をしましょう。最近のICレコーダーは録音可能時間がかなり長くなっていますので、朝からスイッチを入れっぱなしにしておけば、パワハラなどが行われた時間だけをメモ等に記録しておくだけで、あとからその部分だけを切り出すことができます。もちろん、充電式の機器であれば毎日の充電、乾電池式であれば新しい電池に換える等には注意をしなければなりません。


その他、有用なリンクを掲載しておきますので、こちらも一読しておくことをおすすめいたします。
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